吹奏楽のスコアリーディング入門

楽器を始め、吹奏楽団に入り、合奏に参加するようになると、音楽の楽しさは一段と広がります。

楽器を演奏することそのものも楽しいですし、仲間と音を合わせることにも、合奏ならではの楽しさがあります。

一方で、演奏を続けていると、こんなことを思う方もいるのではないでしょうか。

「もっと上手に演奏できるようになりたい」

「もっと美しい音で演奏したい」

「もっと説得力のある音楽を奏でたい」

演奏技術を高めることはもちろん大切です。しかし、合奏全体を理解することも、演奏を深めるための大切な方法の一つです。

そこで役に立つのがスコア(総譜)です。

スコアは「音楽全体の設計図」

吹奏楽で使う楽譜には、大きく分けて「パート譜」と「スコア」があります。

パート譜は、自分が演奏する部分を確認するための楽譜です。いわば、音楽を構成する一つの「部品」の設計図です。

一方、スコアには、複数の楽器がどのように組み合わさって一つの音楽を作っているのかが記されています。

つまり、スコアは音楽全体の設計図と考えることができます。

自分のパートだけを見ていると、「自分は何を演奏しているのか」は分かっても、「今、合奏全体で何が起きているのか」は分かりにくいことがあります。

スコアを読むことで、旋律を誰が担当しているのか、どの楽器が伴奏しているのか、どこで役割が受け渡されているのか、といったことが見えてきます。

それが分かるようになると、自分の演奏をどのように組み立てればよいのかを考える手掛かりにもなります。

まずは「誰がメロディを吹いているのか」を探してみる

スコアを読む練習として、まずおすすめしたいのがメロディを探すことです。

例えば、ブラームス作曲「大学祝典序曲」の冒頭を見てみましょう。

大学祝典序曲の冒頭弦楽器群

この楽譜を見て、メロディはどの楽器が担当しているのか考えてみてください。

音源も聴いて確認してみましょう。

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大学祝典序曲冒頭のメロディを示した楽譜例

この例では、メロディは1stヴァイオリンとヴィオラにまたがって書かれています。

音源だけを聴いていると、「ずっとヴァイオリンが旋律を弾いている」と感じるかもしれません。しかし、スコアを見ると、旋律が複数の楽器の間で受け渡されていることが分かります。

吹奏楽でも同じようなことは頻繁に起こります。

メロディが一つの楽器だけでなく、複数の楽器に受け渡されることもあります。異なる楽器群の間で旋律がつながっていることもあります。

スコアを読むことで、音源を聴いているだけでは気づきにくい楽器同士のつながりが見えてくるのです。

スコアを読むための基礎知識

ここからは、スコアを読むときに知っておくと便利な基本事項を紹介します。

音符やリズム、拍子などの楽典そのものについては、ここでは扱いません。あくまで総譜を読むための基礎知識に絞ります。

スコアはおおむね「木管・金管・打楽器」の順

吹奏楽のスコアでは、一般的に上から木管楽器、金管楽器、打楽器という順番で並んでいます。

スコアの並び順の例(木管)

スコアの並び順の例(木管)

スコアの並び順の例(金管)

スコアの並び順の例(金管)

細かな順番には楽譜によって違いがありますが、まずは「上に木管、中央付近に金管、下に打楽器」という大まかな位置関係を覚えておくと便利です。

コントラバスは、一般的には金管と打楽器の間に置かれます。

例えば、次のような順番が一例です。

  • Piccolo
  • Flute
  • Oboe
  • Bassoon
  • Clarinet in Eb
  • Clarinet in Bb
  • Alto Clarinet
  • Bass Clarinet
  • Soprano Saxophone
  • Alto Saxophone
  • Tenor Saxophone
  • Baritone Saxophone
  • Trumpet
  • Horn
  • Trombone
  • Euphonium
  • Tuba
  • Contrabass
  • Percussion

もちろん、楽器の種類や編成、出版社などによって並び順は異なる場合があります。ここでは、あくまでスコアを読む際の大まかな目安として考えてください。

速度標語や記号は、すべてのパートに書かれるとは限らない

「Allegro」や「Andante」などの速度標語は、スコアの一番上にまとめて書かれていることがよくあります。

すべてのパートに同じ情報を書いてしまうと、かえってスコアが見づらくなるためです。

同じように、CodaやD.S.などの反復に関する記号も、必要な場所にまとめて記載されることがあります。

また、古い楽曲のスコアでは、現在の楽譜と比べて強弱記号などが省略されている場合もあります。

休符が長いパートは、省略されることがある

古いオーケストラのスコアやポケットスコアなどでは、長い休みが続くパートの五線そのものが省略される場合があります。

パート譜で「16小節休み」「24小節休み」などとなっている部分をイメージすると分かりやすいでしょう。

最近の吹奏楽スコアではあまり見かけない形式ですが、古い楽譜を読む際には知っておくと戸惑いにくくなります。

移調楽器に注意する

吹奏楽のスコアを読む上で、初心者が戸惑いやすいものの一つが移調楽器です。

移調楽器とは、楽譜に書かれた音と、実際に鳴る音の高さが異なる楽器のことです。

例えば、B♭クラリネットでは、楽譜上の「ド」を演奏すると、実際にはピアノのB♭の音が鳴ります。

最初の段階では、細かな仕組みをすべて理解する必要はありません。

「楽譜上で同じドと書いてあっても、楽器によって実際に鳴る音が違うことがある」

まずはこれを知っておくだけでも、スコアを見たときの疑問がかなり減ります。

移調楽器や音部記号について、もう少し詳しく知りたい方はこちらの記事も参考になります。

実際にスコアを読むときのポイント

ここまでの内容を踏まえて、実際にスコアを読むときに意識したいポイントを見ていきましょう。

まずは自分と同じ動きをしているパートを探す

最初からスコア全体を理解しようとすると、情報量が多すぎてしまいます。

まずは、自分のパートと同じ動きをしている楽器を探してみましょう。

同じリズム、同じ音型、同じ旋律が別の楽器にも現れていないかを見るだけでも、楽器同士の関係が少しずつ見えてきます。

同じパートでも、動きが違うところを探す

逆に、「ここは他の楽器につられてはいけない」という場所を発見することも重要です。

同じ楽器群の中でも、それぞれ異なる役割を持っている場合があります。

「同じように見えるけれど、実は違う」部分に注目してみるのも、スコアを読む練習になります。

メロディを探す

次に、曲の中でメロディを担当している楽器を探してみましょう。

これは単に「主旋律を探す」というだけではありません。

自分のパートがメロディなのか、メロディを支える役割なのか、それとも別の旋律を担当しているのかが分かれば、演奏の仕方を考える手掛かりになります。

例えば、メロディならしっかり前に出す。対旋律ならメロディとのバランスを考える。伴奏なら、それらを支えられる音量や音色にする。

こうした判断を、スコアから考えられるようになります。

最初は一つ気づくだけで十分です。

一つ分かるようになると、次に別のことが見えてきます。その積み重ねによって、少しずつ楽曲全体の構造が見えるようになっていきます。

メロディ以外の役割も探してみよう

メロディが見つけられるようになったら、次はメロディ以外の要素にも注目してみましょう。

吹奏楽の楽曲では、例えば次のような役割がよく登場します。

  • 旋律
  • 対旋律
  • 和声を補う音型
  • リズムを補う音型
  • ベースライン

分かりやすい例として、スーザ作曲「星条旗よ永遠なれ」のトリオを見てみましょう。

旋律、対旋律、和音+リズム補完音型、ベースラインの例

ここでは、旋律、対旋律、ベースライン、和声・リズムを補う音型が、それぞれ異なる楽器に配置されています。

旋律は、誰もが思い浮かべる有名なメロディです。

トリオの旋律が繰り返される中で、ピッコロやフルートなどが対旋律を加えていきます。

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さらに曲が進むと、トロンボーンなども対旋律に加わり、複数の旋律的な声部が同時に動くようになります。

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低音楽器によるベースラインも、比較的見つけやすい役割です。

一方で、少し聞き取りにくいことがあるのが、和声やリズムを補う音型です。

マーチにおける金管楽器の「後打ち」は、その代表的な例の一つです。

目立つ旋律ではありませんが、音楽の推進力を支える重要な役割を担っています。

また、和声を補うことだけを目的とした音型もあります。

和声を補っている音型の例

こうした音は目立たないこともありますが、なくなってみると音楽の響きが大きく変わることがあります。

このように、スコアを見るときには「この音は何をしているのだろう?」と考えてみることが大切です。

ただし、すべての曲が「旋律・対旋律・伴奏・ベース」という単純な構造になっているわけではありません。

多声的な音楽では、複数の旋律的な声部が対等に動くこともあります。曲によっては、一般的な意味での「伴奏」が存在しないこともあります。

ここで紹介した分類は、あくまでスコアを読み始めるための分かりやすい入り口として捉えてください。

コンデンススコアから始めるのもおすすめ

スコアには、実はさまざまな形式があります。

代表的なのがフルスコアとコンデンススコアです。

フルスコアは、それぞれの楽器の音を細かく記したものです。すべての情報を正確に確認できる一方、情報量が非常に多くなります。

一方、コンデンススコアは、複数の楽器や音楽的な役割をまとめ、少ない五線で楽曲全体を把握しやすくしたものです。

先ほど紹介した「星条旗よ永遠なれ」の譜例も、楽曲の構造を理解するという意味では、コンデンススコアに近い考え方で見ることができます。

コンデンススコアの大きな利点は、情報量が少ないことです。

スコアを読み慣れていない段階では、すべての楽器を同時に追うのは簡単ではありません。

その点、情報が整理されたコンデンススコアなら、「この曲は今、どういう構造になっているのか」を比較的シンプルに見ることができます。

もちろん、コンデンススコアにも限界があります。細かな楽器の動きや、誰がどの役割を担当しているのかを正確に確認するには、フルスコアのほうが適しています。

目的に応じて使い分けるとよいでしょう。

コンデンススコアがなければ、ピアノ譜でもいい

「コンデンススコアを読んでみよう」と言われても、そもそも手元にないこともあります。

そんなときは、ピアノ譜を使ってみるのもおすすめです。

ピアノ譜は基本的に2段の五線で書かれているため、複数の声部を追いかける練習に向いています。

初心者向けの簡単な曲から、非常に複雑な作品まで、さまざまな難易度の楽譜があるのも利点です。

さらに、現在では音源を簡単に探すことができます。

楽譜を目で追いながら音源を聴いてみれば、「この記号が、実際にはこういう音として聞こえるのか」という対応関係を確認できます。

これはスコアリーディングを身につけるうえで、とても有効な方法です。

次はアンサンブル譜を読んでみる

ピアノ譜に慣れてきたら、少人数のアンサンブル作品に進んでみるのもよいでしょう。

吹奏楽団でアンサンブルコンテストに参加する機会があるなら、それをスコアリーディングの練習に活用するのもおすすめです。

自分のパートだけではなく、他のメンバーが何を演奏しているのかを確認しながら練習してみましょう。

自分の音がどこで他のパートと重なり、どこで受け渡されているのかが分かるようになると、アンサンブルそのものの聴き方も変わってきます。

慣れてきたらポケットスコアを使ってみる

スコアを読むことに慣れてきたら、ポケットスコアを一冊用意して、音源を聴きながら読み進めてみるのもおすすめです。

最初からすべての楽器を追う必要はありません。

まずは旋律を追う。次にベースラインを追う。その次に対旋律を探す。

そんなふうに、一つずつ確認していけば十分です。

何度も繰り返しているうちに、少しずつ同時に処理できる情報が増えていきます。

実際の合奏を仕切ってみる

少し変わった方法ですが、スコアリーディングの力を高めるうえで効果的なのが、実際に合奏や分奏を仕切ってみることです。

もちろん、ある程度スコアを読めるようになってから挑戦することをおすすめします。

実際に練習を進めようとすると、「この部分は誰が主役なのか」「どのパートに注意してもらう必要があるのか」「ここで音楽をどうつなげるのか」といったことを考えなければなりません。

自分が演奏しているだけでは気づかなかった問題が、指導する側に回ることで見えてくることがあります。

また、他の人の指導を見て「自分なら気づかなかったところを指摘している」と感じることもあるでしょう。

それも重要な学びです。

他の人が拾ったポイントを、自分も次から意識して聴いてみる。そうすると、少しずつ音楽を聴く視点が増えていきます。

スコアを見ながら音楽を聴いてみよう

そして、もっとも手軽でおすすめしたい方法の一つが、スコアを見ながら音源を聴くことです。

最初はお気に入りの曲を選ぶとよいでしょう。

好きな曲なら、同じ部分を何度繰り返しても苦になりにくいからです。

楽譜は、いわば音楽の「設計図」です。

そして音源は、その設計図をもとに実際に作られた「音楽」です。

設計図と完成したものを見比べるように、スコアと音源を同時に確認してみるのです。

「ここに書かれている音が、実際にはこう聞こえるのか」

「この部分では、この楽器が前に出てくるのか」

「この小さな音型が、実は全体のリズムを支えているのか」

そんな発見が少しずつ増えていきます。

音源なら、気になったところを何度でも戻して聴くことができます。最初から最後まで一度通して聴いたあと、気になった部分だけ繰り返してみるのもよいでしょう。

お気に入りの曲の「知らなかった一面」を見つけることは、音楽を楽しむことそのものにもつながります。

最初からスコアを読める人はいない

最後に、これからスコアを読んでみようという方にお伝えしたいことがあります。

最初からスコアを読める人はいません。

パート譜だって、最初から簡単に読めたわけではないはずです。

私自身も、高校生の頃には吹奏楽を何年も経験し、ピアノも長く習っていました。それでも、スコアを読んで合奏全体を理解することはできませんでした。

ところが、スコアを見ながら音源を聴いたり、実際の練習で楽譜を確認したり、練習を仕切ったりする経験を重ねるうちに、少しずつ読み方が分かるようになっていきました。

もちろん、作曲や編曲をしていることも、その後の理解には大きく影響していると思います。

それでも、最初から特別な能力が必要だったわけではありません。

一つの旋律を見つける。

同じ動きをしている楽器を探す。

ベースラインを探す。

対旋律を探す。

音源を聴いて答え合わせをする。

そうした小さな積み重ねで、少しずつ見えるものが増えていきます。

スコアリーディングは、一朝一夕で身につくものではありません。

でも、読めるようになってくると、自分のパートだけを演奏していたときには見えなかった「音楽全体」が少しずつ見えてきます。

そして、それは演奏そのものにもつながっていきます。

まずは好きな曲を一曲選んで、スコアを開いてみてください。

最初は「何が書いてあるのか分からない」という状態でも構いません。

まずは、メロディを一つ見つけるところから始めてみましょう。

吹奏楽の楽譜をもっと深く知る

スコアが読めるようになってくると、次第に「この楽器はなぜここにいるのだろう」「この音型にはどんな意味があるのだろう」といった疑問も生まれてきます。

そこから先は、楽器法やオーケストレーション、和声、作品の構造など、さらに幅広い音楽の世界につながっていきます。

スコアを読むことは、単に楽譜の情報を読み取る技術ではありません。

一つの音楽が、どのような仕組みでできているのかを知るための方法でもあります。

ぜひ、普段演奏している曲のスコアを開いて、いつもとは少し違う角度から音楽を眺めてみてください。

参考:スコアの読み方入門に関する元記事

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